犬の目が人間よりも悪いと言われる理由
オレは「犬の目は人間よりも悪い」って認識でここまで生きてきた。
でも、一緒に暮らしている犬を冷静に観察してみると「犬って目が悪いな〜!」って思った事が本当に未だにないんだ。
目の前に投げたおやつが見つからない時とかは、逆に「鼻が悪いのかな(笑)」なんて思ったりしたことはある。
犬の解説なんかでよく聞く犬の目の悪いポイントで
1. 色覚の範囲が狭い
犬は「赤と緑」を区別できず、人間でいうと色弱に近い見え方をしている。
世界は「青・黄・灰色系」のトーンに見えているらしい。
2. 視力が低い
人間の視力を1.0とすると、犬は0.2〜0.3程度と言われている。
遠くの細かいものをはっきり見るのは苦手のよう。
というのがある。
だからと言って犬が不便そうに暮らしている感じもしない。
そこで、実際に犬の目は悪いのかを調べてみた。
犬の目は実はめちゃくちゃ凄いんです!
犬の本来の姿は薄明薄暮性(はくめいはくぼせい)=黄昏活動性 と言われているんだ。
これはオオカミの頃の名残。獲物(シカ・ウサギなど)が動き出す時間帯に合わせて夕方から夜明けにかけて活動、特に夕暮れと夜明けの薄暗い時間が特に活発になる。
オオカミ時代のDNAを引き継いで犬となった現代でも薄暗い時間に狩をするのに最も適した「目」を持っている。
このうす暗い環境では、人間よりも圧倒的に犬の方が見えてるんだ。
人間よりも優れている目の能力は、下記の3つ。
1. 暗所視力
- 網膜の「※杆体細胞」が豊富+タペタム(光を反射して増幅する膜で人間には無い)がある。
- 人間の夜間視力を「1」とすると、犬は「約5倍」暗闇に強い。
- うす暗い世界では人間は「ほぼモノクロ」にしか見えない。
- 犬はそもそも色数が少ないけど、暗くても「薄いカラー(青黄系)」をある程度は見えている。
2. 動体視力
- 静止物より「動く物」に強い。
- 人間は視覚全体で解像度を追うのに対し、犬は動きの検知に特化。
- 特に60m以上離れた“動く物”は、人間より早く気づける。
3. 視野の広さ
- 人間:約180°
- 犬:200〜250°(犬種により差あり)
→ 正面での立体視は弱いが、周囲を見渡す能力は人間より高い。
※杆体細胞(rod cells)は網膜にある光を感じる細胞。光の強弱に敏感で、暗い場所での視覚(夜間視力)を担っている。人間の網膜には 約1.2億個の杆体細胞 があって、色の区別はできないけど暗闇での形や動きを察知できる。
犬の目が得意とする分野では人間の目は全く太刀打ちできないほど凄いんだ。
つまりは人と犬の進化の過程で、同じ目でも全く違う目的のために進化したって事。
例えるなら、ショベルカー(犬)とF1マシン(人)を比較するようなものなんだ。
ショベルカー(犬の目)は
- 用途特化型→ 暗い・薄暗い場所での動きを感知
- 力強さ・実用性重視→ 色や細部はそこまで重要じゃない
- 環境適応型→ 山・森・夜明けや夕方の狩りに強い
F1マシン(人間の目)
- 精密特化型→ 細部や色をくっきり識別
- 明るい場所で最大性能→ 細かい作業、文字の読解に強い
- 速度は速いが環境を選ぶ→ 暗闇では性能ダウン
つまり、ショベルカー(犬)は「荒れ地や暗所でも生き残る」ために最適化された道具。F1(人間)は「舗装された明るい環境」で最高の性能を出す道具どっちが優れてるかじゃなくて、それぞれのミッションに特化した進化ってこと。
犬と人、どちらの目が優れているかではなく、それぞれが“生きる環境に合わせて特化した進化”をしてきたということ。
うす暗い世界で人と犬の目の能力を比較をしてみると・・・
時間帯 |
人間の特徴 |
犬の特徴 |
比較結果 |
---|---|---|---|
明るい昼・夕方 |
錐体細胞が活躍 → 視力1.0以上も可能。色覚は3色型で赤・緑・青を認識。解像度・色の正確さは非常に高い。 |
視力は0.2~0.3程度。色覚は2色型で赤系が苦手。細かさや色の正確さは人間に劣る。 |
昼は人間が圧勝 |
薄暗い朝夕(トワイライト) |
視力は落ち始める(0.3~0.5程度)。色覚も鈍くなる。 |
杆体細胞が多いため暗さに強い。まだ0.2~0.3程度を維持でき、動きにも敏感。 |
犬が有利(解像度は同等〜少し劣るが、暗さへの適応で逆転) |
夜(街灯・月明かりレベル) |
錐体が働かず杆体のみ → 視力0.1~0.2程度。色はほぼモノクロ。動体視力も落ちる。 |
タペタム反射で光を増幅 → 0.2~0.3程度を維持。色は弱いが暗闇での動き把握が得意。 |
夜は犬が圧倒的有利 |
昼間は人間が圧倒的に有利、薄暗い時間帯は犬が逆転、夜は犬が圧勝!
犬は人に合わせて生活をしてくれている都合上、人が得意な明るさの環境では人に比べると目が悪いというだけ。
犬の生活に人が合わせたとしたら、人間は目が悪いって犬に言われちゃうかも。
暗所では人間を凌駕する目を持っていても実は目に依存していない
俺たち人間は目にかなり頼って生きている。
人間が各感覚をどんな割合で頼りにしているかというと(ざっくりイメージ)
- 視覚:70〜80% → 人間は「目で見て判断する動物」。言葉を読む・表情を読む・手先の作業など、ほとんどが視覚依存。
- 聴覚:10〜15% → 会話や環境音で補助的に使う。
- 嗅覚・味覚・触覚:5〜10%程度 → 匂いや味は重要だけど、世界の把握全体では小さな役割。
人間は「視覚がダメになると生活に強烈な制限がかかる」視覚偏重の生き物なんだ。
人に対し犬はというと(ざっくりイメージ)、
- 嗅覚:50%以上 → 匂いで「時間の流れ」や「誰が通ったか」まで理解できる。世界の中心は鼻。
- 聴覚:20〜30% → 高周波も聞けるので、遠くの犬や小動物の音をキャッチ。警戒心に直結。
- 視覚:10〜20% → 補助的な感覚。動きの察知や暗闇での探索に強み。
犬は「鼻と耳で世界を見ている」=嗅覚・聴覚偏重の生き物で、視覚はたったの10〜20%しかないんだ。
犬の目の役割は人でいうと耳と同じくらいという事らしい。
柴犬の祖先の縄文犬は暗闇の恐怖から縄文人を守っていた
縄文時代の生活環境は、夜は焚き火やかすかな月明かりしかなく、人間にとって暗闇は「見えない世界」=恐怖そのものだった。
人間の目や耳や鼻では夜間の危険(獣や敵の接近)はほとんど察知できない。
そんな人間にとって、縄文犬は暗闇でも動きを察知でき、物音や気配に即座に反応してくれる。
耳と鼻と夜目のトリプルセンサーで、人間よりはるかに早く「異変」を知らせてくれる守り神的な存在だったんだ。
縄文人にとって犬は「ただの狩猟の相棒」ではなく、夜の恐怖から守ってくれる 精神的安心のシンボル でもあったんだと思う。
夜に縄文犬がそばにいることで、縄文人は安心して眠れたはず。
豆知識💡考古学的な補足
- 縄文時代の犬の骨が人と一緒に丁重に埋葬されている例がある。
→ 「家族」や「守護存在」として大切にされていた証拠。 - 狩猟だけでなく、夜間の警戒や集落防衛にも大きな役割を果たしていたと考えられている。
我が家の警備隊システム=シバソック(笑)
我が家はとっても古くあちこちに隙間がある。夏になるとその隙間から巨大ムカデが家の中に侵入してくるんだ。
我が家の柴犬達は電気を消して寝ていてもムカデの侵入にいち早く察知して吠えてオレを起こしてくれる。
柴犬2匹と寝ていると防犯の点から安心して網戸で寝られるんだ。
夜寝る時に電気を消すとオレはほぼ何も見えないが、愛犬達は水を飲みに行ったり、窓の外を警戒しに行ったり、真っ暗な家の中をうろちょろしている。
オレが夜中に電気をつけずにトイレに行った時、自分で置いたものに躓いているオレをみて愛犬がくすくす笑っているような気がする。
縄文時代から現代まで、犬は暗闇を見通す力で人を守り、安心を与えてきた。白柴と赤柴もその役目をしっかり果たしてくれている。