医療保険・がん保険不要論の大前提は生活防衛資金

昨今の節約ブームで、保険の見直しや必要の無い保険の解約で無駄な支出を減らしましょうというものがある。
その節約論の流れで、「生活防衛資金があるのなら医療保険・がん保険は必要無し」という考えがある。日本での月の医療費は、国民健康保険で限度額が年収に応じて決められている(高額医療費制度)事が根拠で、オレも確かになと思う。
ただ、生活防衛資金の考え方が非常に「ゆるい」というか、「いいかげん」というか、「大雑把」というか。医療保険やがん保険を解約する大前提の生活防衛資金に対する意識がぼんやりとしているケースが多いようにオレは感じるんだ。
今年の初めに眼球破裂という大怪我をして、トータルで1ヶ月の入院と3回の手術をし、現在8ヶ月の休業療養中のオレの実体験からの注意喚起と医療保険・がん保険の必要性の話をしておきたい。
オレも、生活防衛資金に対してぼんやり考えていた一人。
日本の貯蓄率から生活防衛資金を想像してみる

総務省「家計調査」(2023)によれば、
- 2人以上世帯の金融資産の中央値:約1,070万円
- 独身世帯(単身世帯)の中央値:約350万円
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」によれば、
- 20代(全世帯):金融資産ゼロ 44.5%
- 30代:ゼロ 36.2%
- 40代:ゼロ 32.4%
- 50代:ゼロ 26.3%
- 60代:ゼロ 20.9%
現在の日本では、「全く貯金がない」人が一定割合で存在していて、生活防衛資金どころじゃない層が結構多い。
貯蓄があったとしても、貯蓄と生活防衛資金と分けられていない世帯が多い可能性がある。
生活防衛資金とは?ー本当の定義と使い方

生活防衛資金について絶対にしっかりと理解しておいて欲しい。
生活防衛資金とは
- 怪我や病気で働けなくなった
- 失業して収入が途絶えた
- 突発的な出費(家電が壊れた、急な引っ越しなど)
こういう「収入が止まったり、急にお金が必要になった時」に生活を維持できるようにするため準備しておくお金の事なんだ。
目安金額
一般的には、独身で生活費の3〜6ヶ月分、家族持ちで生活費の6ヶ月〜1年分が目安とされている。
例)独身なら毎月の生活費が20万円なら、最低60万円〜120万円を確保しておく。
家族持ちで毎月の生活費が20万円なら、最低120万〜240万円を確保しておく。
重要ポイント

オレはここを勘違いしていたんだけど、生活防衛資金と貯金は別物。病気や失業など、いざという時以外絶対に使わない。全く融通のきかないお金として管理していることが重要なんだ。
ざっくりと貯金があるから大丈夫では無い。ざっくり貯金には、自動車の買換え費用や老後資金などが含まれていると思う。それらとは確実に一線を引いた口座で管理するお金でなくてはいけないんだ。
- 「貯めたら絶対に手をつけないお金」
- 「いつでも使える普通預金に置いておく」
- 「安全第一で絶対に運用しない」
投資用の資金と違って、「守るためのお金」なので利回りよりも流動性(すぐに引き出せること)が大事。
アラフィフにとっての生活防衛資金は「失業+病気」セットで考えるべき

若い頃の生活防衛資金に対しては主に失業に対しての貯蓄の意味合いが大きいが、オレのようなアラフィフにとっての生活防衛資金の意味合いは病気=長期=失業という意味合いが増えてくる。
今回オレの経験の教訓は、病気や怪我が元で失業リスクが一気に跳ね上がるという事。
逆も然りで、失業をしたのちに病気や怪我をするリスクが若者に対して多いという事。
失業か病気・怪我どちらかだけを想定した生活防衛資金では全然足りない場合があるという事なんだ。
できる事なら、失業と病気が同時に襲いかかってきた時の事を考えて、18ヶ月分以上の生活防衛費を準備しておくべきだと思う。
オレの今回の怪我は労災だったから、医療費は労災保険から全額出してもらって、月々の生活費は労災保険の休業補償で80%もらえていたんだけど、これがプライベートでの怪我だったら、ゾッ!とするほどにお金が飛んでいってしまう事態になっていたんだ。
しかも、今回の怪我で使い物にならないと解雇されていたら・・・
※会社員・公務員(健康保険=社保加入者)であれば、病気やケガで連続4日以上働けないとき、給料の約2/3が最長1年半もらえる。
突然の大怪我での収入ダウンをカバーしてくれたのは県民共済

オレの場合、10ヶ月以上にも及ぶ休業でバーナスは入ってこないし、給料から2割カットされた金額の休業給付しかもらえないし、仕事に復帰したら溜まりに溜まった社会保険料を会社に支払わないといけない。今年一年の収入は大幅に減っているのにも関わらず、去年の年収をベースに社会保険料は計算されるので、生活がままならないレベルの収入しかないんだ。
過去に最低でも県民共済くらいは入っておいたほうがいいよ!と友達に勧められて入っていた県民共済のおかげで、今回の怪我に対する収入ダウンを完璧にカバーしてもらえたんだ。
今回、月々7,000円の掛金の県民共済からもらった金額をざっくり言うと、入院+手術+通院給付金で約90万円。目の怪我の具合を労災保険がどのように判断するかにもよるが、今回の目の怪我に労災障害等級がつけば、さらにお見舞金が県民共済から支給される。
もしオレが県民共済に入っておらずに、県民共済からの支給がなければ、100万円以上の赤字だったんだ。
医療保険が必要な人・不要かもしれない人

- 不要かもしれない人:生活防衛資金+潤沢な老後資金がある層
- 必要だと思う人:生活防衛資金をきっちり分けられていない人、大半のアラフィフ世代
今回のオレの経験から言える事は、100万円単位での金額が貯金から減ることが、今の生活にも老後資金にも全く影響が出ない人は医療保険やがん保険に入る必要は無いのかもしれない。
ただ、多くのアラフィフにとって貯金の意味合いが老後資金とイコールだと思う。おれがそうだったからなんだけど、本当の意味での生活防衛資金を分けて管理している人というのはあんまりいないんじゃとオレは思っている。
コツコツ必死に節約して貯めた大切な貯金が突然の病気や怪我で一気に減ってしまうのは、病気や怪我とのダブルショックで精神的にまいってしまうかもしれない。
おれが考える保険論は、資産家以外は「自動車・火災・医療」は絶対に外せない三大保険!なんだ。
まとめ

今回、医療保険から100万円近いお金が支給された事によって、「金銭的に助けられた!」という事はもちろんあるんだけど、それよりも、怪我をした当初、いつまで怪我の治療が続くのかわからない時に医療保険からの支給があるという事だけで金銭的不安が一気に減ったという点が大きかったんだ。
医療保険やがん保険は不要っていう人たちの根拠のデータは結果論でしかない。
でも、実際の病気や怪我は、医療費も休業期間も経済的に先が全く見えない闇の中を進んでいくような現在進行形なんだ。
おそらく、すでに潤沢な老後資金があって、さらに生活防衛資金がある人以外は、経済的にも精神的にも医療保険やがん保険に入っておくべきだと思う
オレのように生活防衛資金をきちんと分けられていない人は多いと思う。だからこそ、生活防衛資金と保険の両方をどう組み合わせるか一度考えてほしい。